社会科学
概要
本書の主人公ピョートル・レオニードヴィチ・カピッツァ(1894 -1984)はロシアの実験物理学者である。理論物理学者レフ・ダヴィドヴィチ・ランダウ(1908-1968)と並んでロシアの最も優れた物理学者で、2人ともノーベル物理学賞を受賞している。
彼はその生涯に驚く程多くの(時に非常に長い)手紙を書いた。それらの手紙からカピッツァの研究と生活と思想を読み取ることができる。つまり、カピッツァの手紙は彼の「自伝」とも見ることができる。
カピッツァと同時代のソ連共産党の指導者 I. V. スターリンに書いた手紙が多数ある。政治家宛の手紙では科学研究について易しく説き、同時にソ連の科学研究の問題点を率直に指摘しているものがある。
また、同じ道を歩む科学者宛の手紙では、アーネスト・ラザフォードとその弟子たちとの交流に加えて、ニールス・ボーア、さらに一見カピッツァと正反対の性格を持ち、人付き合いをしないことで知られる理論物理学者中の理論物理学者であるポール・ディラックとは気が合い、手紙を交わしている。ディラックとは終生親友関係にあった。また、ラザフォードはカピッツァにとっては師であり、父親のような存在であった。
カピッツァの手紙の中にはカピッツァの科学への見方、研究への姿勢、人柄が現れており、カピッツァという人間を知る上で極めて重要である。また読んで非常に面白く、永く価値を失わないであろう。
本書に掲載した手紙は、書籍として3点存在するカピッツァの書簡集とインターネットに公開されているものから計114通の手紙を選び、年代ごとのカピッツァにまつわるエピソードの紹介を交えつつ年代順にまとめたものである。
目次
はじめに
第1章 カピッツァの研究と生涯 ― 手紙の背景
第2章 ケンブリッジ時代 ― 強磁場とヘリウム液化を実現する新方法
第3章 ソ連からの出国禁止とその後の研究
第4章 逮捕された理論物理学者フォックとランダウの救出
第5章 低温の液体ヘリウムの謎の解明と酸素の大量生産
第6章 ドイツとの戦争の時期
第7章 公職を剥奪され、ダーチャで研究を行う
第8章 公職への復帰からノーベル賞受賞の最晩年まで
第9章 ディラックとランダウの見たカピッツァ
本書で参考にしたカピッツァについての本
あとがき
著者略歴
斯波 弘行
1941年 横浜に生まれる
現在、東京工業大学および東京大学名誉教授
主な著作:
『基礎の固体物理学』(2007年、培風館)
『新版 個体の分子論』(2019年、森北出版)
寄稿:
「低温物理学者レフ・シュプニコフの研究と生涯」(物性研究Vol.7、2018年)
- 2025.1.1
- 『おかやましみんのどうわ2025』
- 2024.2.20
- 『School-Based Curriculum Management』
- 2024.12.10
- 『現代経営の法務と税務』
- 2024.11.30
- 『グローバル都市経営学会ハンドブックⅢ』
- 2024.09.12
- 『メンタルトレーニングの基礎 第2版』
- 2024.09.10
- 『NIE子ども家庭支援論演習』
- 2024.09.05
- 『グローカルな視点から考える欧米の世界と文化』
- 2024.08.10
- 『考える力』
- 2024.08.10
- 『みずほ銀行事件最高裁判決から考える租税法上の諸問題』
- 2024.07.10
- 『復学支援 どうしていますか?』