医学・看護介護・福祉
概要
「性同一性障害(GID)」。今では広く知られるようになった言葉だ。しかしながら現在の規則、法律、制度などの多くは「そのような人はいないもの」として整備されないままとなっており、当事者を取り巻く環境はいまだ厳しいといえる。
本書の著者は、医師としておよそ20年にわたり性同一性障害の診断・治療に取り組んできた。当初はまれだった小中学生の受診も次第に増え、今では10代の占める割合は1割を超えるという。
「スカートをはくのが嫌だった」「プールの授業を休んだ」「「おかま」といじめられた」「リストカットした」「自分はおかしい」「誰にも言えない」。
性同一性障害当事者の中には、無知や無理解によるいじめや偏見から、うつや引きこもり、自殺未遂などの経験を持つ人も少なくない。自分の気持ちを吐き出せない子どもたち。封じ込められた彼らの心を、最も近くで聴いてきた著者が感じたのは、子どもへの対応、特に学校での対応の重要性である。
性同一性障害の児童・生徒への適切な支援、多様な性への理解を深めるための在校生全体に対する教育、保護者への情報提供など、子どもへの対応は当事者のみならず、周囲の生徒や保護者など、多くの人生を変える可能性に満ちている。
本書では、性的マイノリティの基礎知識から社会の変遷、性別違和感を持つ子どもからのアラームサイン、文部科学省の動き、医療的支援、学校でできる具体的な対応など、様々な調査や事例を交え、分かりやすく解説。性別違和感を持つ子どもたちが自分らしく「普通に」生きるために、まずは大人が関心を持つこと。知識がないせいで身近な人を傷つけないための、教師や保護者、そしてすべての大人たちに向けた入門書である。
目次
はじめに
第1章 性同一性障害、性的マイノリティ、LGBTの基礎知識
第2章 性同一性障害を取り巻く社会の変遷
第3章 ジェンダークリニックの受診者たち
第4章 思春期における性同一性障害の子どもたち
第5章 性別違和感を持つ子どもからのアラームサイン
第6章 いつ子どもに性同一性障害を教えるべきか
第7章 学校で性同一性障害を教える
第8章 文部科学省の動き
第9章 思春期の子どもへの医療的支援
第10章 学校の役割は拡大
第11章 学校でできる具体的な対応
第12章 性同一性障害の子どもと競技スポーツ
第13章 性同一性障害の子どもとインクルーシブ教育・合理的配慮
第14章 性同一性障害の子どもの幸福とは?
おわりに
コラム
著者略歴
中塚 幹也(なかつか みきや)
医学博士
岡山大学ジェンダークリニック 医師
岡山大学大学院保健学研究科 教授
岡山大学生殖補助医療技術教育研究(ART)センター 教授
GID(性同一性障害)学会 理事長
1986年 岡山大学医学部卒業
1992~1995年 米国NIH留学
1998年~ 岡山大学ジェンダークリニック
2006年~ 岡山大学医学部保健学科 教授
2007年~ 岡山大学大学院保健学研究科 教授
2016年~ GID(性同一性障害)学会認定医
専門領域:生殖医学
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